から議論、考察が生まれること。

 頁作(id:matakimika)さんとid:emifuwaさんのOTAKU考察が滅法面白い。
http://d.hatena.ne.jp/matakimika/20050331#p1
http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20050402#p2
 OTAKU文化、特に同人誌は歴史的記録が乏しいので、往時の体験をたとえ主観に基づくものであっても、記録として残すことは非常に重要である。*1だから頁作さんとid:emifuwaさんがこうした情報を公開してくださったことは非常に感謝するし、文筆業者でなくても、情報を広範に発信することを可能にしたコンピュータ/インターネット/ブログ*2は素晴らしい。

 また、頁作さんのid:matakimika:20050330#p3におけるメモは非常に示唆に富んでいる。特に非モテ系に関する考察とオンラインゲームとPBMの比較は、ぼくが最近ずっと考えていることに近いので、とても興味深く拝読した。
 id:emifuwaさんのid:emifuwa:20050402#p2におけるベルセルク問題やOTAKUにおける「神」問題も面白い。

ベルセルク (1) (ヤングアニマルコミツクス)

ベルセルク (1) (ヤングアニマルコミツクス)


黒い戦士編:「使徒」を狩る謎の戦士ガッツ

鷹の団編:ガッツの生い立ちとガッツにとって人生の転機となったグリフィスおよび鷹の団の仲間との生活と「蝕」

続・黒い戦士編:新たな仲間と共にキャスカを助けようとするガッツ
という構成になっており、謎の戦士であるガッツや「使徒」という不気味な存在の説明が鷹の団編で回想的に挿入され、そして「蝕」を生き延びたガッツがゴッド・ハンドと如何に対峙するかという物語である。
 ぼくがネットで読んだ感想の大半や、『ベルセルク』の愛読者である友人の感想は、id:emifuwaさんの考えに近い。「蝕」というカーニバルで『ベルセルク』は一度、大きなカタルシスを迎え、その後の展開は大きく変わった。「蝕」以降の数巻の展開が冗長なのは、物語としての緩急をつけるために(個人的には)ありだと思うが、問題は「魔法」の出現である。
 『ベルセルク』には、大きく分けて二つの形而上的存在がある。一つはゴッドハンドや使徒の存在で、もう一つはフローラやシールケのような魔術士たちだ。*3
 鷹の団編までは使徒という形而上的存在に対して、形而下的存在であるガッツが己の肉体と剣を駆使して戦うというところに力点が置かれており、その途方もなさを支えるマンガとしての説得力が『ベルセルク』の魅力であった。ファンタジーでありながら、所謂「剣と魔法の物語」でないところが日本のファンタジー作品として新鮮だったわけだ。
 しかし、続・黒い戦士編では、ガッツが魔法の力を借りたことでそれまで保持していた緊張感を失ってしまった。これこそが続・黒い戦士編がつまらないと思える最大の要因だろう。*4ゆえに多くの読者の期待は、ガッツが最期にどうなるのかという一点に集中していると推察される。
 ぼく個人の極めて独善的な欲望を述べれば、あの「蝕」までのカタルシスを超えるクライマックスを描ききって欲しい。しかし、
デビルマン (1) (KCデラックス (435))

デビルマン (1) (KCデラックス (435))

寄生獣(1) (アフタヌーンKC)

寄生獣(1) (アフタヌーンKC)

という名作の数々や、そして何といっても
NEON GENESIS EVANGELION DVD-BOX (仮)

NEON GENESIS EVANGELION DVD-BOX (仮)

という破天荒な傑作が既に発表されている中で『ベルセルク』が如何なるクライマックスを迎えるのかを考えると、期待と不安が入り混じった複雑な感情を覚えざるを得ない。
 『ベルセルク』のオフィシャルサイトの最初のフラッシュ・ムービーは鷹の団編まで読みきった人は必見。原作を読み返したくなること必至。*5 

 話は変わるが、ぼくが今、商業雑誌で連載されている作品の中でもっとも面白いと思うマンガは断然

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)

だ。この作品に関しては、今はただただ一読者として舐めるように愛読しているだけだが、連載が終わったら、『HELLSING』論を書こうと思っている。

 で、「神」問題だが、あくまで個人的な印象としては、id:emifuwaさんが仰っているような男女での用法の区別はさほどないと思う。また、OTAKUにおける「神」概念の出自はおそらく2ちゃんねるで、「すごいことをやった人=神」という感じではないかと推測している。*6

*1:民俗学の抱える問題と一緒ね。

*2:またはソーシャル・ネットワーク

*3:もちろん、これは便宜上の分類で、『ベルセルク』の形而上世界観はこの分類を包括したところに存在している。

*4:ある友人は、鷹の団編が既に最初の黒い戦士編のトラウマ物語になっており、あの描写では黒い戦士編でのガッツの不思議な魅力につながらないと言ったことがあり、これはこれで説得力のある意見だと思う。

*5:このムービーを観ていて「もし、『ベルセルク』をストーリーはそのままで楳図かずお先生が描いたら……」というのを想像して身震いした。すっげー読みたい!

*6:それこそ47氏とか。あと、この意味での神は一神教的な「神」ではなく、多神教的な「神」に近いだろう。