にかいのおんながきになる。

 さっき、コンビニで買い物をしようと外へ出た。途中に立派なソメイヨシノを庭に植えているナイスな家があって、ここの櫻は毎年、目の保養をさせてもらっている。コンビニに行く途中にその櫻の樹の下を通ったとき、ちょうど微風が吹いていて肌寒く、桜の花びらが音もなく舞い散っていた。ふと見上げるとその家の照明にぼんやりと照らし出された櫻が花びらを舞い散らせながらも咲きほこっていた。
 坂口安吾の傑作短編に

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

というのがあるが、あんな感じ。
 ところであの小説は、櫻がなければ単なる面倒かつ面妖な女とそれに振り回される哀れな男の話だが、舞台装置として櫻を使うことで、それが美と恐怖と恍惚の物語に昇華している。古来より、日本では櫻は歌や物語の中で様々な形で描かれてきたが、『桜の森の満開の下』ほど日本文化における櫻の象徴性を描いた作品もないだろう。『櫻の森の満開の下』の主題をより端的な形で描いた「櫻の樹の下には」や櫻のみならず、日本文化の闇の系譜を恐るべき博識を駆使して描いた
帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

帝都物語〈第壱番〉 (角川文庫)

と合わせて読みたい一冊。