地獄が歌い、地獄で歌う者。

が大好きだ。「ヘルシング」が始まる前から平野耕太さんのファンだったので、単行本はすぐさま買った。単行本第一巻は「さすが平野さん面白いなー、巧いなー」という感じで読んでいたが単行本第二巻収載の「DEAD ZONE3」で驚いた。85ページからのアーカードの描写がぼくがそれまで知っていた平野耕太を革新したからだ。既読の方ならわかってもらえると思うが、あのシーンでついにアーカードは異形としての真の力(の一端)を存分に見せつける。
 あらゆる創作表現において、超常現象や異界、非日常的存在を描くのは難しい。そういった<外部>を描く場合、その「ありえなさ」の程度とその描写自体がシンクロしなければならないからだ。*1以降も第三巻98〜99ページ、112ページ、第五巻70〜73ページ、94〜95ページなどにそうした異形の者の存在感と運動が見事に描かれている。これはアニメなど他の表現形式ではできない、マンガでしかできないものだ。そして、これは、これこそは平野さんにしかできないものだ。これほど今後の展開に期待しているマンガは、他にはない。
 id:hhosono:20050625#1119670967で「ヘルシング」の素晴らしさについて書いたので、興味のある方は読んでください。

*1:ホラー映画、特にサイコホラーなどで、作者の「健常さ」が垣間見えたり、怖がらせようという意図が読めてしまったときほど興ざめる。