はねた髪を何と呼ぶ?

 あなたはピンとはねた髪の毛を何とよびますか? オタク系文化に身をおいている人の多くは、おそらく「触角」と答えるのではないかと思います。なかには「アホ毛」と答える人もいるでしょう。しかしこのアホ毛という言葉、どうやらオタク発の言葉ではないみたいです。というのは、昨日、何となくテレビを見ていたらヴィダル・サスーンヘア・ワックスのCMで「私はアホ毛を許さない!」とか云ってたのですよ。ぼくはその時までアホ毛っていうのもオタクが言い出した言葉だと思っていたので「待てお前、今、アホ毛って言ったな?」とか思わずテレビに向かって言ったりして(苦笑)。
 で、先程、知り合いの女性と電話している時にアホ毛という言葉について聞いたら、女性同士ではわりと普通に使われている言葉だそうです*1。その場合のアホ毛は寝癖ではねた髪とか髪のわけ目とかから1〜2本はねている髪などをさすので、オタクのいう触角とは違いますが。オタクのいう触角は、明らかに髪の毛の束なので、冷静に考えるとあんな量の髪の毛はヘア・ワックスとかムースとか使わないと立たないはずですが、そんな野暮なツッコミは不要ですな。でも本当にギャルゲーのキャラがムースとか使って触角立ててたら笑えるなぁ。別の意味でビジュアル系だ。または大きいお兄ちゃんたちの萌え力を感知するアンテナか? そういやギャルゲーのコスする人達って、さすがに触角まではやらないよなぁ。ムースとか使って本当に触角立てても実際にやると違和感の方が強いし。おそらく触角って、髪の毛を描く時の手くせを様式化したものだと思うんですよ。そういう意味では触角の魅力って、2次元キャラにしか出せないものですな。勿論、筆致を様式化した絵画作品が萌え絵以前になかったわけではなく、例えば矢吹丈の髪型は後世のマンガのキャラクター造型に影響を与えたと思うし、マンガ以前にもそうした例は幾らでもあります。わかりやすいところだとアルフォンス・ミュシャの描く女性の髪の毛の装飾的な曲線とか。でもミュシャの描く髪の毛の装飾性はいくらたくさん真似する人が現れても、そこから萌え要素は開発されてはいない。*2。つまり、矢吹丈の髪型とかミュシャの描く女性の髪には、作者のちばあきおさんやミュシャ*3の作家性という署名*4を受け手は感じるわけで、誰が発明したとか考えない萌え要素とは明らかに違う。だから萌え要素/萌えキャラがシミュラークル*5だと考えるのはやはり正しい。

*1:その人はそのように説明してくれたけど、どの程度浸透しているかは不明。

*2:藤島康介さんが「ああっ女神様」の単行本表紙イラストなどでミュシャの技法を取り入れてから、マンガ/同人誌でミュシャの真似というか藤島康介さんの真似が流行ったけど、やはりそうした模倣の流れが追えてしまう範囲内のものでしかなかった。

*3:何で現在生きている日本人にはさんづけで、もうお亡くなりになっている方々や外国人はそのまま書くんだろう。芥川さんとかサイードさんとか魯迅さんとか言わないもんなぁ。不思議だ。

*4:ヴァルター・ベンヤミンのいう「アウラ」ってこういうことだよね。そういやあうら星児というマンガ家がいるのですが、ベンヤミンアウラを意識しているのかな。もしそうなら最近コピーを多用するのも意図的なのかな。

*5:オリジナルなきコピーのこと。