舞城王太郎の「暗闇の中で子供」を読む。

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

読了。奈津川兄弟の三男、三郎が語り手。第一作の
煙か土か食い物 (講談社ノベルス)

煙か土か食い物 (講談社ノベルス)

の語り手、四郎との語り口の差異と、二作に通低する舞城さん自身の文体が巧い具合に機能している。三郎はミステリ作家ということもあって、自己言及的な部分もあり、けっこう面白く読めた。しかも第一作のトリック(というほどのものでもないか)が惜しげもなく言及されていて、やっぱりこの人はトリックとかどうでもいい人なんじゃないかなと思う。純文学畑の不毛さに見切りをつけて、とりあえずミステリの体裁を整えてエンターテインメントとしてデビューして、やりたいことはそれとは別にあるという感じ。
 作者の意図はさておき、前作に比べると、今回はわりととっちらかった展開。特に後半は「物語」を破壊するために書かれたのではと思うくらい。第一作を読んでダメだった人は、この作品は余計に読めないだろう。
 どうやら、舞城さんに物語のカタルシスを求めるのは無駄のようだ。舞城さんは圧倒的にまず、文体の人で、最初の5ページを読んでダメなら、もう読まなくていいと思う。あと、それぞれの登場人物の内面描写がある種の「破綻」をきたしているけど、これを「下手」と見るか、その破綻こそを「今の人間の内面のリアル」と見るかも、人によって様々だと思う。ぼく個人は、基本的にはウェルメイドな物語が好きなので、壊す方法をとるなら、もっと徹底的にぶっ壊して欲しい。未読だが、
九十九十九 (講談社ノベルス)

九十九十九 (講談社ノベルス)

には、その辺を期待している。