牛肉を若い女性&成熟した女性に例えたポスター回収
http://www.zakzak.co.jp/top/2005_03/t2005031228.html
 この記事を読んで即座に思ったのは、「不快に感じる」と指摘した女性はこのポスターだけでなく、池波正太郎の著作にも同様の指摘を出版社や著作権保持者に対してしたのだろうかということと、三重県観光連盟のあまりに無自覚な男性中心主義と、企画力の無さについてである。
 池波正太郎の作品には、「宍置きの良い」などといった表現で、太った女性への性的な視線が多数、見られる。当然、そういった表現に嫌悪感を覚える読者も少なからずいることだろう。しかし、池波の諸著作が女性蔑視を含むとして発禁になったという話は、少なくともぼくは寡聞にして知らない。何故、池波のそうした著作が発禁にならないかといえば、そうした描写のみを取り出せば、女性蔑視的にも取られる可能性はあるが、小説には「文脈」というものがあり、その水準から判断された時に池波の作品は高い文学性を備えており*1、公共的に読まれるべきであると社会に承認されているからである。
 要はポスターという、様々な空間に多数設置される宣伝媒体で、商品としての牛肉と女性の身体が等価に並べられること自体が問題なのである。これは三重県観光連盟が池波の業績に阿り、かつ女性に対する配慮の欠如の表れである。私たちは、こうした社会構造に組み込まれ、自明のものと化した差別主義に敏感でなければならない。

*1:要は小説として面白いってこと。