the great drifting man

ぼくは読書が好きだ。暇さえあれば、というか目と両手を使う作業をしている時以外は可能な限り本を読む。もっとも精読というより、粗読、乱読の類だし、全体としては面白い本でも、ちょっとでもダレてくると、読むのを中断して他の本を読んでしまう。結果として、十数冊の本を並行して読むことになる。*1
 しかし、稀に一気に読んでしまう本もある。先ほど読了した

だめだこりゃ (新潮文庫)

だめだこりゃ (新潮文庫)

もその一冊である。
 本書は、言わずと知れた戦後屈指のコメディアン・グループ、ドリフターズのリーダー、いかりや長介さんによる、自身の半生とドリフターズ回顧録である。
 ぼくは団塊ジュニアの最後の世代だが、ぼくと同年代の人々は全員集合!派、ひょうきん族派で大きく分かれると思う。ぼくは断然ひょうきん族派であるが、もちろん「8時だヨ ! 全員集合」だって大好きだ。ただ、ぼくは荒井注さんが在籍し、加藤茶さんの黄金期であった前期ドリフターズをリアルタイムで観ていない。志村けんさん加入後のドリフについても東村山音頭をリアルタイムで観た覚えはなく、「全員集合」のギャグのうちでリアルタイムで観た記憶のある最古のものは「カーラースーなぜ鳴くのーカラスの勝手でしょー」だ。ぼくの記憶にある最古のコメディアン・グループはドリフターズなのだ。出自がミュージシャンである彼らの笑いは、おそらくぼくにとっての「ブラッド・ミュージック」なのだろう。
 本書はドリフターズという芸能史上、他に例を見ないグループの、ブラウン管には映らない部分を描いているだけでなく、戦後の大衆文化史としても非常に重要なものである。お笑いを愛して止まない全ての人々にとって、必読の書である。そしてを観て欲しい。そこには、ノスタルジーでもなんでもない、普遍的なギャグがある。

*1:雑誌、マンガは除く。ここで言う「本」は小説とか評論、研究書とか随筆の類ね。