キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!!!

 さっきまで色々とフガフガしてたら、友達のアンディ@North Carolinaからエアメールで荷物が届いて、何だろうと思って開けてみたら"Call of Cthulhu 20th Anniversary edition"ですよ!*1
 この前、日本に遊びに来た時に「後でプレゼント送るから」とか云ってたから、何をくれるのか期待してたんだけど、封を開けて出てきた本のハードカバーに赤く箔押しされた古き印を見た瞬間に「クトゥルフキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!!!」だって(笑)。久々にTRPGやりたくなったよ*2
 「クトゥルフの呼び声」とは、20世紀前半にアメリカの俗悪SF/ホラー小説誌"Weird Tales"で活躍した小説家、ラブクラフトの小説を基にしたゲームで、その作品世界を忠実にゲーム化しているTRPGの傑作の一つ。ここで、そもそもTRPGを知らない人のために大雑把に説明すると、要はコンピュータを使わないで、筆記用具とサイコロなどを使って、ドラクエ指輪物語みたいなお話を作って楽しむゲームのことね。実際にはゲームマスターと呼ばれるナレーター/シナリオライター/その他大勢などの操作役一人と、色々なキャラクター(戦士とか僧侶とか魔法使いとか)を担当するプレイヤー数人がルールとゲームマスターが事前に用意したシナリオを使って共にお話を作るというもの。もちろん、ファンタジーだけじゃなくて、SFとかホラーとか色々なジャンルがあって、「クトゥルフの呼び声」もその一つなわけです。
 で、このゲーム自体もすごいんだけど、原作を書いたラブクラフトって人もすごい。この人は、活躍の場こそ「パルプ・マガジン」と呼ばれる、粗悪な紙に印刷された俗悪小説誌だったけど、その小説は掃きだめに鶴というくらいすごかった。何せ「かつて全宇宙を軽くふっとばすくらいの驚異的なスケールを持っている超越的な存在が跳梁跋扈していたが、その多くが活動を休止している間に宇宙は生成し、地球が生まれ、人類が誕生したが、それら(旧支配者とか旧神とか外なる神とか呼ばれる)が再び活動を始めれば、いつでも全宇宙は壊滅するだろう」という正に破格のスケール。いや、マジですごいよね。宇宙の誕生から現在まで約45億年だとして、それすら旧神の一眠りの間なんだから、「ホラー小説におけるコペルニクス的転回」と絶賛されるのもよく解る。その壮大な宇宙観のため、「クトゥルフ神話」なんて呼び方もあるくらいだし、ポスト・アポカリプス(黙示録以降)ものとかポスト・ホロコースト(大量虐殺以降)ものの最終兵器といっても過言ではないでしょう。ノストラダムスの『百詩篇』とか「エヴァンゲリオン」も裸足で逃げ出すスケールですよ。しかも彼はエドガー・アラン・ポーともしばしば並び称されるほどの才能の持ち主で、スティーブン・キングやロバート・ブロック(映画「サイコ」の原作者)、日本では菊池秀行や荒俣宏など数多くの小説家たちから絶大な支持を受けているわけだから、その影響力は推して知るべし。
 しかも彼の偉いところは、その作品のスケールだけではなく、作品の中で作り上げた設定(地名、人物名、歴史、旧神や旧支配者などの異形の怪物達など)を自分の他の作品でも使い回すことで、その作品世界を緻密で膨大なものに仕立て、更に彼を慕う弟子達に自分の作品世界の設定を使って小説を書くことを許可したことだ。先に挙げたロバート・ブロックはラヴクラフトの愛弟子の一人なんだけど、彼が「自分の小説で貴方の小説の設定を使い、更に貴方をモデルにした主人公を結末で殺してもいいですか?」と手紙を出したところ、ラブクラフトは快諾したばかりか、その返礼にブロックをモデルにした主人公を自身の作品の中で虐殺しているんだから、恐れ入るね。
 ラヴクラフトの作品がこうした「二次創作」を生み出したことは、アニメ/マンガ/ゲームを愛して止まない私たちから見ても非常に興味深い。だって、ラヴクラフトの作品を基にした「クトゥルフ神話」作品は、ラヴクラフトが死んで50年以上経つ現在でも世界各地で大量に作られていて、今では小説だけでなく、マンガやアニメ、ゲームや映画などでもその設定が使われることがあるくらいで、現在のアニメ/マンガ/ゲームの創作/享受のされ方を考える上で、とても参考になるからだ。もしかすると、クトゥルフ神話は世界でもっともメディアミックスされている虚構世界かもしれない。
 それに、今でも多くの作家達がクトゥルフ神話を使って「二次創作」したくなるのは、おそらくそれが虚構の在り方、つまり作品世界とキャラクターの在り方として作り手の欲望を強力に刺激するからだと思うんだけど、このクトゥルフ神話のパワフルさは見習うべきだよね。もしかすると、今後はクトゥルフ神話をベースにした「萌え」作品が現れてもおかしくないんじゃないかな。*3
 ラブクラフトの作品は、日本でもたくさん翻訳版が出ているんだけど、たくさん出過ぎているくらいなので、一度も読んだことのない人には荒俣宏さんが編纂した

ラヴクラフト 恐怖の宇宙史 (角川ホラー文庫)

ラヴクラフト 恐怖の宇宙史 (角川ホラー文庫)

がお薦め。これを読んで、宇宙的恐怖にはまるべし!

*1:邦題「クトゥルフの呼び声」というTRPGの20周年記念ルールブックのこと。

*2:誰かやりませんか?

*3:小説誌『ファウスト』第一号に掲載された西尾維新さんの「魔法少女りすか」は、もしかしたらそうなのかも。